目次
“土器”、“陶器”、“b器”、“磁器" の違い
釉薬
化粧土
絵の具
下絵付け用絵の具
上絵つけ用絵の具
金液、銀液、 金粉、銀粉
レースドールについての質問
“土器”、“陶器”、“b器”、“磁器" の違いは次のホームページをご覧ください。
有田町歴史民俗資料館ブログ「泉山日録」
釉薬
釉薬の種類
釉薬には、700-1100℃で焼成する低火度釉と1200-1300℃で焼成する高火度釉があります。
その他の釉薬には、艶消(マット)釉、乳濁釉、失透釉、結晶釉などの種類があります。
色の付いた釉薬が市販されていますが、これは透明釉薬に下絵の具を加えた物です。
例 色つき釉薬の作り方。
10%の色つき釉薬を作ります。(基礎釉薬900グラムに絵の具を100グラム添加します。)
泥釉薬100グラムと絵の具100グラムを攪拌し、濃い色釉薬を作ります。1:1
濃い色釉薬を透明釉薬泥800グラムと混合攪拌します。 透明釉薬泥900g 絵の具100gを混ぜます。100/(900+100)x100=10% となり、絵の具10パ-セントの色釉薬が完成です。
釉薬はおもに、鉛やアルカリ金属類であるナトリウム、カルシウムなどをベースにしたガラス素地に、呈色剤となる金属顔料をまぜたものです。焼成温度は800°Cから1300°Cまでで、金属原料自体は溶融せず、したがって釉色は色あざやかな状態で表現でき、また細部にまで装飾できます。しかし、黄色に赤系統を混合すると金属が溶融し、変色・退色してしまいます。
ベルリン王立製陶所の研究所所長のゲーゼルは釉を研究し、製作するときの各材料の式を考案しました。これにより、同じ品質の釉を大量生産することが可能になり、現在まで続いています。
ゲーゼルが作成した式をゲーゼル式といいます。
Σ(塩基)=1, 0.1<Σ(中性成分)=1, 1<Σ(酸性成分)<10
参考に、下の表で概念を示します。
塩基 溶かす成分 |
% |
|
中性成分 つなぐ成分 |
% |
|
酸性成分 |
% |
CaO |
|
|
Al2O3アルミナ |
|
|
SiO2シリカ |
|
K2O |
|
|
|
|
|
|
|
MgO |
|
|
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|
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|
|
Na2O |
|
|
|
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その他の成分 |
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合計= 1 |
1 |
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0.1から1の間 |
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|
1から10の間 |
|
この他にFe2O3 Mn3O4 P2O5 TiO2 などの成分を加えることがあります。
元素記号 |
原子量 |
H |
1.00794 |
O |
15.9994 |
C |
12.0107 |
Na |
22.99 |
Al |
26.982 |
Fe |
55.847 |
Ca |
40.08 |
Mg |
24.305 |
K |
39.098 |
Mn |
54.938 |
P |
30.974 |
Si |
28.086 |
数字の単位は成分の重量モル比です。例えば、釜戸長石の成分の重量%はK2O= 3.75、Na2O= 3.94、CaO= 0.9、MgO= 0.22、Al2O3=12.81、SiO2=77.63含まれます。
各々の分子の分子量は右表のようになる。
釜戸長石を100g使う時
K2O=3.75%*100g=3.75g
Na2O=3.94%*100=3.94g
CaO=0.9%*100=9g
MgO=0.22%*100g=0.22g
Al2O3=12.81*100g=12.8g
SiO2=77.63*100g=77.63g
分子量で割ると成分モル比が出ます。
K2O=3.75/(39.098*2+15.9994)=0.04
Na2O=3.94/(22.99*2+15.9994)=0.064
CaO=9/(40.082+15.9994)=0.16
MgO=0.22/(24.305+15.9994)=0.005
Al2O3=12.8/(26.982*2+15.9994*3)=0.13
SiO2=77.63/(28.086+15.9994*2)=1.29
ゲーゼル式は以下の表のようになります。
釜戸長石 |
塩基 溶かす成分 |
% |
|
中性成分 つなぐ成分 |
% |
|
酸性成分 |
% |
CaO |
0.16 |
|
Al2O3アルミナ |
0.13 |
|
SiO2シリカ |
1.29 |
|
K2O |
0.04 |
|
|
|
|
|
|
|
MgO |
0.005 |
|
|
|
|
|
|
|
Na2O |
.064 |
|
|
|
|
|
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|
合計= 1 |
1 |
|
(0.1から1の間) |
|
|
から10の間) |
|
もし、Si2Oを減らすと、相対的に塩基性成分の割合が増え、溶けやすくなり、低い温度で焼成する釉となります。
中性成分/酸性成分のモル比が1/7から1/10の場合は光沢透明釉になり、その範囲から外れると白濁します。
参考に(株)とこなめ釉薬の透明釉の成分と焼成温度の関係を示します。
透明釉 1250〜1280℃
釜戸長石 65% KNaO、Al2O3、SiO2
鼠石灰石 15%
亜鉛華 5%
蛙目粘土 5%
朝鮮カオリン 5%
珪石 5%
透明釉 1150℃
釜戸長石 50%
鼠石灰石 10%
亜鉛華 5%
蛙目粘土 5%
珪石 15%
フリット 15%
原材料に含まれる元素の含有割合 : “季刊つくる陶磁郎21号 特集自分の釉をつくる(双葉社)”P37から引用
釉薬の成分構成(重量%)
|
塩基 溶かす成分 |
中性成分 つなぐ成分 |
酸性成分 |
|
|||
|
K2O |
Na2O |
CaO |
MgO |
Al2O3 |
SiO2 |
Fe2O3 |
福島長石 |
10.42 |
3.48 |
0.24 |
0.00 |
18.57 |
66.74 |
0.18 |
釜戸長石 |
3.75 |
3.94 |
0.90 |
0.22 |
12.81 |
77.63 |
0.26 |
土灰 |
1.49 |
0.55 |
35.09 |
5.44 |
5.83 |
14.08 |
1.94 |
鼠石灰 |
0.05 |
0.20 |
55.05 |
0.04 |
0.20 |
0.40 |
0.19 |
ドロマイト |
0.00 |
0.00 |
33.08 |
17.64 |
0.83 |
4.66 |
0.08 |
イス灰 |
0.34 |
0.30 |
44.66 |
2.66 |
2.92 |
11.32 |
0.38 |
朝鮮カオリン |
0.54 |
0.46 |
0.60 |
0.25 |
37.27 |
45.82 |
0.53 |
ニュージーランドカオリン |
0.02 |
0.10 |
0.11 |
0.11 |
36.80 |
47.80 |
|
福島珪石 |
0.05 |
0.28 |
0.39 |
0.00 |
0.56 |
98.62 |
0.03 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
表1 原料の成分割合(重量%)
|
K2O |
Na2O |
CaO |
MgO |
Al2O3 |
SiO2 |
Fe2O3 |
TiO2 |
Igloss |
福島長石 |
9.50 |
3.51 |
0.62 |
0.03 |
17.33 |
67.78 |
|
|
1.14 |
韓国カオリン |
0.26 |
0.46 |
0.95 |
0.33 |
38.96 |
45.57 |
|
|
12.72 |
鼠石灰 |
|
|
55.05 |
0.04 |
0.20 |
0.40 |
|
|
44.09 |
福島珪石 |
|
|
|
|
0.10 |
99.30 |
|
|
0.57 |
原料の成分比(モル数)
|
K2O |
Na2O |
CaO |
MgO |
Al2O3 |
SiO2 |
Fe2O3 |
TiO2 |
Igloss |
福島長石 |
0.1008 |
0.0566 |
0.0111 |
0.0007 |
0.1700 |
1.1280 |
|
|
1.14 |
韓国カオリン |
0.0028 |
0.0074 |
0.0169 |
0.0082 |
0.3821 |
0.7584 |
|
|
12.72 |
鼠石灰 |
|
|
0.9816 |
0.0010 |
0.0020 |
0.0067 |
|
|
44.09 |
福島珪石 |
|
|
|
|
|
1.6525 |
|
|
0.57 |
|
式量 |
KNaO |
K2O |
Na2O |
CaO |
MgO |
Al2O3 |
SiO2 |
Fe2O3 |
TiO2 |
福島長石 |
635.32 |
1.0000 |
0.6404 |
0.3596 |
0.0705 |
0.0044 |
1.0801 |
7.1665 |
|
|
韓国カオリン |
261.71 |
|
0.0073 |
0.0194 |
0.0442 |
0.0215 |
1.0000 |
1.9848 |
|
|
鼠石灰 |
101.87 |
|
|
|
1.0000 |
0.0010 |
|
|
|
|
福島珪石 |
60.51 |
|
|
|
|
|
|
10000 |
|
|
釉薬に色をつけてみよう!
釉薬は(基礎釉+添加物)で成り立っています。
添加物には、
1.乳濁、乳白効果を与えるもの
2.色をつけるもの
3.その他(鉱化材ほか)
などがあります。
ここでは、2.色をつけるものについてお話します。
色をつけるものは主に以下の2つがあります。
1.金属化合物
2.顔料
1の金属化合物は、着色に用いられる金属元素と酸素、炭酸、などが合わさったものです。
着色に用いられる金属元素は、
クロム(Cr)
マンガン(Mn)
鉄(Fe)
コバルト(Co)
ニッケル(Ni)
銅(Cu)
が主なものです。
色が出るのは、可視光線の波長の一部のエネルギーを吸収あるいは、放出することによります。
これらは遷移金属に含まれますが、原子は電子を持っていますが、その電子は他の原子との作用により、電子軌道に分裂が起きてエネルギーの高低ができ、その高低差の光エネルギーを吸収したり放出したりします(配位子場理論)。それが、可視光の波長の場合、色が発生します。その他、電荷移動吸収帯による発色もあります。
そのほか、希土類元素も発色に用いられることがあります。
化粧土
昔は色のついた素地土が一般的で、素地の色を隠し白く見せるために化粧土を塗っていたそうです。素地の表面をおおうものは釉薬が一般的ですが、違いは、釉薬が焼成により、溶けてガラス状態になるのに対し、化粧土は焼成しても溶けず、素地表面で固くなるだけです。
化粧土は成形後して乾燥させた生素地にかけることもありますし、素焼きにかけることもありますが、吸水性が高く、化粧土のかかる量が多いので、グラデーションは難しくなります。また、素地の窪みに塗ると厚くなってしまいますが、絵の具と同様に、厚い層は剥がれ易くなります。
化粧土の原料は、天草陶石、三石蝋石、朝鮮カオリン、蛙目粘土などです。はがれ防止や割れ防止のために珪石、長石などを素地の性質に応じて使われます。
絵の具
チャイナペイントに使用する絵の具には大きく分けて
1. 下絵付け用絵の具
2. 上絵付け用絵の具
の2種類があります。
1. 下絵付け用絵の具
下絵の具
製法
下絵の具は硼酸(ほうさん)・硼砂・珪砂(けいしゃ)などの白い粘土に発色剤の金属や安定剤・補助剤を加えて製造します。
昔のした絵の具は呉須が大半でした。昔は顔料が金属かその成分を含んだ石(または鉱石)しかありませんでした。大変でしたね。最近は材料入手が難しいので、合成呉須を使います。合成呉須は着色材のコバルトやマンガン、鉄などの酸化物とカオリンなどを調合して作られます。
陶器の場合は信楽土のような白土。磁器用の場合は、磁器土の乾かしたものに、細かく粉砕した顔料を混ぜます。 顔料はトルコ青、トウシコウ(ピンク)、プラセオ黄、クロム(黄緑)などです。これらは10%含みます。コバルトは3%くらい混ぜます。
調合して高温で焼いたトルコ青とかプラセオ黄とかピンクのトウシコウとか金属のクロム(黄緑))の場合1割前後。コバルトは、3%位で発色します。顔料の場合は、黄とピンクの中間色とかトルコ青とピンクの中間色とかも可能です。
例えば、絵の具70グラムと釉薬の泥30グラム混合し、出来れば専用のポットミルで一昼夜粉砕すると深みのある良い色となります。粒径が細かくなれば成る程良い色になるのです。ハマグリから胡粉を作るやり方に似ていますね。
下絵付の色
下絵具としては、赤、ピンク、オレンジ、グリーン、黄、紫などたくさんの色がありますが、1300℃前後という高い温度で焼成するため上絵のような鮮やかな発色はしませんし、グラデーションを出すのはかなり難しいです。
絵具は耐火度が高く、また高温で釉薬と反応して発色するコバルト、クロム、鉄などの酸化物で作られているので、高温の料理や油などに触れても色がなくなりません。また、耐久性があり、酸による色落ちやすり傷が付きにくくなっています。
2. 上絵付け用絵の具
もともと食器や保存用に使われる陶磁器に色彩を飾る絵の具ですので、酸やアルカリに強いこと、塗りやすいことが求められています。
従来、陶磁器用上絵具は, フリットと呼ばれる鉛を多量に含む(50%)のガラスの粉体に金属酸化物等の着色材を混ぜて作られています。容量400mlのアルミナポットに, 無鉛フリット100g, 各色の着色材, 蒸留水100mlの割合で加えてアルミナ玉石で15時間くらい粉砕・混合して上絵の具を作ります。
その為、ガラス質の素材に種々の化学物質やこれらを含む鉱石が加えられているので、白磁に上絵の具でペイントして焼成すると、高温で一度ガラスを溶かしてこれらの物質を閉じ込めていますが、永く使用していると極僅かながら成分が溶け出してきたり、酸性に弱く、食酢などで鉛が溶け出してきます。
食品に影響があるのは鉛やカドミウムですので、低カドミウム、低鉛上絵の具が多くのメーカから発売されています。
例えば、フェロー社(旧デグサ社)のサンシャインシリーズは耐酸性、低鉛・低カドミウムを特徴とする上絵の具です。
日本の絵の具には何の規制もありませんが、アメリカでは1991年にカリフォルニア州でプロポジション65規制が施行され、翌1992年に米国食品医薬局(FDA)によるガイドラインが制定され、鉛含有量が規制されました。鉛の閾値は200ppmです。このため、日本から輸出される上絵の具はこの規制をクリアする為に、鉛やカドミウム含有量を低く抑える必要になり低鉛絵の具が開発されました。まさにアメリカさま様です。この後、日本では17年遅れの2008年に「飲食器からの鉛溶出規格基準」の改正がされました。
ですから、日本で鉛の害の無いペイントや絵付けされた家庭用食器を揃えるなら2008年以降に作られた物が安全です。もちろんアメリカ製なら1992年以降の物が安全です。それ以前のペイントや食器は装飾用に使いましょう。
金液・銀液 金粉・銀粉
本金、銀をリキッド又はペーストに加工したものです。
筆にて描き、750℃前後で焼成する事により金、銀本来の発色を呈します。
レースドールについての質問
1、粘土に漬けこんだレース自体は、1200度で焼けば完全に燃焼してしまいますか?
1) 1200度で焼けばレースは完全に燃焼してしまいます。
レースの原料はコットンで、これはセルロースです。化学式は
C6H12O6
なので、熱を与えると分解してCとHとOになります。
Cは酸素と反応して最終的にCO2となり気体となります。
HもH2Oガスとなります。
化学繊維のレースもありますが、概ねC4H6O2の酢酸ビニルが基調なので、高温でガスとなります。
2、レースが焼けても粘土にレース模様や微妙なひだが残るのですか?
2) はい、レースの模様だけが残ります。
粘土の構成成分は酸素46.6% 珪素27.7%, アルミ8.1%, 鉄5.0%その他となっています。
珪素Siの融点は1410度、アルミの融点は660度ですが、自然界では酸化アルミとして存在し、融点は2010度、鉄の融点は
1535度です。
レースや布に粘土を浸み込ませて高温にすると、セルロースなどの気体成分が蒸発し、後に融点の高い成分が穴の開いたスポンジ状に残ります。
形状を軽くすると、自身の重みで変形したりせず、元の形を保ったままとなります。
レースのギャザーは軽いので、そのままの形を保ちます。
塊などにすると、自重で変形してしまいます。
3、この製法は、マイセン由来のものですか?
3) はい、基本的にはマイセンの白磁に由来しています。
西洋白磁の発明はマイセンでなされました。ここでは、カップや壷がつくられました。
その後、競合がわんさか現れ、いろいろな工夫を凝らした磁器を創作しました。
1895年、陶工アントン・ミュラーがフォルクシュテットにドレスデン人形の工房を開き、繊細優美なレースをまとった<ドレスデン人形>が有名になり、王侯貴族たちの心を強く魅了し、贈り物として評判を呼びました。
西洋陶芸教室 陶栄企画
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Tel/Fax: 03−3409−3775
E−mail :toeikikaku@ybb.ne.jp
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